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「あら、事実よ。あの家は、魔法で人には空き家のままってことにしてるし……。そうね、TYさんの隠し子ってことにしておくのも悪くないわね」
澄まし顔でそんなセリフを吐かれ、三条は呆れる。
「わたしの話を信じるかどうかは探偵さん次第ですけど」
そのとき、救急車のサイレン音が近づいてくるのがわかった。どちらからくるのだろうかと三条は首をめぐらす。いつの間にか雨もやんでいた。
「やっと到着のようね。あとはまかせたわ」
「えっ?」
振り返ると、もうライムの姿はそこにはなかった。蒸発したかのように消えていた。
アンダーパスから引き上げられたクルマのなかには人が残されていて、放り出して逃げるわけにはいかない。対応は三条がやるしかない。
(あとはまかせたわって……救急隊員にどう説明したものかな……)
アンダーパスからどうやってクルマを引き上げたのか──。救急車が到着するまでしばし思案する羽目になった。
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