時を越えて、貴女に会いに行く

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「う…ん。」 眠い。眠くて目が開けられない。頭痛がする 「近衛さん、薬の量を間違えたのではないですか?」 近衛さん?どこかで聞いたような…あっ、新しい?お隣さんの名前。どういう事? 「大森さん、大変失礼しました。体調がすぐれないようなので、このままお運びします。」 そう言って、お姫様抱っこをされたようだ。 私は、されるがまま、又気を失ってしまった。 「う…ん?!」 目を開けると、見たことのない天井、知らない場所だ。ベッドに寝かされていた。起き上がろうとして、ちょっとめまいがした。 「いったい何が起こっているの?」 私の独り言が聞こえたようで、 「目が覚めましたか?」 と声をかけられた。この人は誰? 「あの…?!」 「私は、あなたの隣に引っ越して来た、近衛と申します。宜しくお願いします。」 今、挨拶されても…。 「近藤さんは、どうされたのですか?昨日までお隣さんだったのですが。」 「彼らは、任務が終わったので自由になりました。」 「任務…?!」 すると扉が開いた。先程の男の人が入って来た。この人は、何故か私を不安にさせる。 「大森さん、すみませんでした。体調はいかがですか?」 「えぇ、まぁ。」 私は、不安を悟られないようにうつ向く。 「申し遅れました。私は、風間勇介さんの秘書をしております。近藤隼人です。あなたをお迎えに行くよう言付かりました。」 「えっ?!あなたも近藤さん?勇介の秘書って、勇介は本当に生きているの?!」 私の頭は疑問だらけになっている。 「大森さんの隣に住んでいたのは、私の弟です。五年間、あなたを見守っていました。」 「見守って?!何故…。」 「風間勇介さんに関係があるとしか、私の口からは申し上げられません。直接ご本人に聞いてください。」 私は、動揺した。そして考えた。 今日は午後から、美容室とエステに行く予定だった。予約までしてある。その後、ショッピングをして、明日着ていく服を購入しようと考えていたのだ。これが現実だった筈だ。それなのに…。 「あの…私、こんな格好をしているので、勇介に会うのなら、きちんとしたいのですが。」 近藤さんは呆れたように、 「状況わかってますか?もうあの家に戻れないかもしれないのですよ。」 「えっ?!」 ローンはまだ残ってる。私のお気に入りの空間。それに、明日実家へ帰ると伝えている。 「それは、困ります。」 「風間勇介さんに会いたくないのですか?」 「会いたいです。会えるものなら。」 「それなら、このまま会った方が良いと思いますが。もうすぐ、こちらへ参ります。」 近藤さんのケータイがなった。 「はい…、はい、かしこまりました。」 近藤さんは笑顔で、 「風間勇介さんからです。大森さんの希望を叶えて欲しいとの事です。」 「?!」 もしかして、聞かれてた?本当に勇介なの? 「起きられますか?こちらへどうぞ。」 ベッドから降りるとき、少しふらついてしまった。近衛さんが横から支えてくれた。 ドアの外へ出ると、大きな窓があって、それは見たことのない風景が広がっていた。 「あの…ここはどこですか?」 「風間勇介さんが住んでいる所ですよ。」 近衛さんが答えてくれた。 「でも、窓の外は何て言うのか、日本ですか?」 「…。」 近衛さんは、答えてくれない。 外は、ゴツゴツとした岩山がそびえて遠くまで見渡せる。そして全体的に赤い。 行ったことはないが、グランドキャニオンみたいだ。私は、自分の置かれた現状に、ついていけなくなった。 「勇介は、私の知ってる勇介ですよね?」 「あなたの知ってる勇介さんは、私は存じ上げませんが、風間勇介さんは、13年前にこちらの世界へ来て研究を始められました。」 「こちらの世界…?!」 「近衛!」 近衛さんがハッとした様子で私を見た。 廊下を進み、突き当たりのドアを開けてくれた。 「奥にシャワールームがあります。洋服も用意してありますので、自由に着てくださって結構です。」 「ありがとうございます。」 私は、シャワールームと思われるドアを開けた。全面ガラス張りは恥ずかしいけど、仕方ない。頭からシャワーを浴びる。 これは、まだ夢かもな…。思考がついていけない。ここは、日本では無さそう。海外へ来るほどの時間はたってないと思う。じゃあ、ここはどこ?!シャンプーやボディーソープは置いてない。とりあえずスッキリしたので、シャワーを止めると、いきなり風が上から出てきた。もしかして、バスタオルのかわり?乾かすため?乾いた側からもくもくまわりが白く霞んできた。えっ?!これは何?靄が消えると!!私はブルーの品のいいドレスを着ていた。いつの間にか濃いブルーのヒールを履いている。手にはベージュのポーチ。 近くの鏡を見ると、髪もセットされていた。 「?!」 さっきは、鏡がなかった。 「ご用意は、お済みですか?」 近衛さんから声がかかる。 「あの…?これは…。」 「これから、風間勇介様の所へお連れします。」 シャワールームを出てからさっきのドアを開けた。 もときた場所へ戻っている気がする。 大きな窓は、ガラスに色がついていて、外が見えなくなっている。 「こちらです。」 ドアをノックして、 「大森由美子さんをお連れしました。」 ドアが開けられた。
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