未来のヒーロー

1/1
前へ
/1ページ
次へ
「はぁ...はぁ...」辺りを見回す。真っ暗で目を凝らさないと良く見えない。タワーが建ち並ぶ都会...。でもいつもの風景とは少し違う。 (ここはどこだろう?) すると、勝手に足が動き出した。私の意思とは関係なく体が動く。 (まるで、誰かの体に入ったみたい) とりあえず、様子からして『この人』は急いでいる。 (何かに追われてるのかな?) 『この人』の息は荒く、すごく焦っているようだった。 『きっとここまで来れば大丈夫だよね...』 すると、急に男の子の声が聞こえた。いや、違う。『この人』が喋ったんだ。 一体誰なんだろう?聞き覚えのない声...。 「っ......がはっ」あなたは誰?と問いかけようとすると喉の辺りが締め付けられて痛い。私は黙って体の力を抜いた。これ以上自分で動こうとしても無駄だと気づいたからだ。 夢にしてもリアルだなと呑気なことを思いながら、私は『この人』の行動を見守る。さっきから、動かず壁に手をつき、息を整えている。壁には月とついた手が映っている。 (ん?あれこの壁...ガラス張り?!) 男の子の姿見えるかもっ!と思い目を凝らした。男の子は下を向いていた。私は唯一動く目を上に向けた。だけど、誰も映っていなかった。 (あれ?) その時だった。 バンッッッ!!!!! 後ろから、耳をつんざくような銃声が響いた。 男の子の体が動く。私は目線を戻し、後ろを見ようとした。 「止まれっ!!」野太い男の人の声で、なぜかゾッとした。 『また...か......』男の子の絶望する声が聞こえ、目が閉じられる。真っ暗だ。何も見えない。 (一体何が起こってるの??またかって...) 「おい!ミキ!!お前の...い.....き...」声がどんどん遠くなっていく。頭の中でゴーンと鈍い鐘の音が鳴り響いた。 プチンッという音とともに、体が楽になった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加