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「はぁ...はぁ...」辺りを見回す。真っ暗で目を凝らさないと良く見えない。タワーが建ち並ぶ都会...。でもいつもの風景とは少し違う。
(ここはどこだろう?)
すると、勝手に足が動き出した。私の意思とは関係なく体が動く。
(まるで、誰かの体に入ったみたい)
とりあえず、様子からして『この人』は急いでいる。
(何かに追われてるのかな?)
『この人』の息は荒く、すごく焦っているようだった。
『きっとここまで来れば大丈夫だよね...』
すると、急に男の子の声が聞こえた。いや、違う。『この人』が喋ったんだ。
一体誰なんだろう?聞き覚えのない声...。
「っ......がはっ」あなたは誰?と問いかけようとすると喉の辺りが締め付けられて痛い。私は黙って体の力を抜いた。これ以上自分で動こうとしても無駄だと気づいたからだ。
夢にしてもリアルだなと呑気なことを思いながら、私は『この人』の行動を見守る。さっきから、動かず壁に手をつき、息を整えている。壁には月とついた手が映っている。
(ん?あれこの壁...ガラス張り?!)
男の子の姿見えるかもっ!と思い目を凝らした。男の子は下を向いていた。私は唯一動く目を上に向けた。だけど、誰も映っていなかった。
(あれ?)
その時だった。
バンッッッ!!!!!
後ろから、耳をつんざくような銃声が響いた。
男の子の体が動く。私は目線を戻し、後ろを見ようとした。
「止まれっ!!」野太い男の人の声で、なぜかゾッとした。
『また...か......』男の子の絶望する声が聞こえ、目が閉じられる。真っ暗だ。何も見えない。
(一体何が起こってるの??またかって...)
「おい!ミキ!!お前の...い.....き...」声がどんどん遠くなっていく。頭の中でゴーンと鈍い鐘の音が鳴り響いた。
プチンッという音とともに、体が楽になった。
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