パパは二人いて、息子を騙していた

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 運良く入れた漫画喫茶で、一夜を過ごす。夢久は少女漫画にハマって夜更(よふ)かししたが、古いノスタルジックな歌謡曲が流れていて、疲れた巣茂々は聴き入って心地よく眠った。そのうちに父の背中に(もた)れ、娘もすやすや。  そして始発の特急列車に親娘(おやこ)は飛び乗る。 「パパ、どこに行くのよ? 誰と会うの?」 「家に帰るよ。もう一人の自分に会いにね」  双子座の伊達男の巣茂々は詐欺師を演じ、普段は頭陀袋(ずたぶくろ)に砂と五寸釘(ごすんくぎ)を詰めただけの、もう一人の自分のマリオネットに(はたら)かせた。数年に渡り、母親に似た鈍感な息子を(だま)し、軽く生計を立てていた雨宮巣茂々(あまみや すもも)は二人いる。  困ったことに、息子と連絡を取ろうとし、公衆電話に10円玉を入れて電話したところ、何処の馬の骨か893が受話器を取ったため、頭陀袋が捕まりそうになっているらしいと、察したそばから息子の身を案じた巣茂々(すもも)は、電光石火の早業で、身辺整理をするために、やはり親友の魔女を頼ったのだけれど……。
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