パパは二人いて、息子を騙していた

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パパは二人いて、息子を騙していた

 13番目に別れた魔女の妻との間の息子に、久しぶりに会うのも悪くないかと思ったし、ごみごみした首都圏を(おとず)れたのはまだいい。無一文でも食べ物にも宿にも困らないから。しかし上空から降りられる場所がなかった。整備された都会のオアシスくらいしか……。 「お母さん、変態、ハダカの変態がいるよ」 「見ちゃだめ」「何だ、あれ、すげえ刺青」 「ヤクザか」「……マフィアじゃねえの?」 「目を合わせるな」「触らぬ神に祟りなし」  後ろ指を差されながらもゴミ袋を被って、機転を利かせ、世捨人のふりをした巣茂々(すもも)。その手の中で、きーきー鳴くのは小さな猿(Pygmy Marmoset)。一先ず、この世は金だ。金に支配された国で金がないと何もできないから大変なことだ。やたらめったら都会では魔法も使えないし、人間に見つかるともっと大変なことになる。  仕方がないから巣茂々も蝙蝠(コウモリ)に変身して、一旦、病気を覚悟で下水に逃げ込んだけど、汚いゴキブリと一緒に野良猫に追い回され、命からがら(不死身だけれど)逃げ切った。踏まれないか、食べられないか怖かったが、マンホールからゴキブリの姿で這い出した。  暗い地下で拾ったなけなしの金を手にし、取り敢えず無理しないでも涙が流れたから、893な界隈(かいわい)で、恵みの雨のシャワーを浴び、闇に紛れ込むスパイのように抜き足差し足、父と娘はゴミ捨て場に立ち寄っては漁って、まだ綺麗な服を見繕うとその場で着込んだ。
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