魔女の噂 〜消えた狼男の行方を追え

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魔女の噂 〜消えた狼男の行方を追え

スーさん(巣茂々の愛称)、落ち着いて聞いてちょうだい」 「どうしたんだい? そんなに慌てて……」  水晶玉の向こうで南の海のように青い瞳が大写しになったから眼鏡拭きで拭いてから、直感的に巣茂々は嫌な予感を覚えながらも、鉤爪でカツカツと球体を叩いて、確かめた。すぐに聞こえたのは女友達の震える低い声。ハスキーな魔女の声が(ささや)いたのは怖い噂話。悪い(うわさ)をすれば、やがて悪魔がやってくる。 「目撃情報があった。妖怪国『かかめ』で。サンちゃんが生きているかも知れない……」  魔界にあり、妖怪たちの()むとある国で、人間のような男が野獣に変身して暴れ回り、非営利警備団体『魔界警備隊(まかいけいびたい)』に捕まったとおかしな噂を吹き込んだ魔女は神妙だった。何故なら彼女の夫も狼憑きだったから……。 「魔界で? それは本当かい、ココさん?」  海妖のココは日本で人間の男と結婚した。海に身投げした薄幸な男と恋に落ちたから。しかし、その男はただの人間ではなかった。月の満ち欠けに狂う(おおかみ)の霊に()かれており、魔女で妖魔の妻なしに生きられない身体を、持て余した果てに心を()んで失踪(しっそう)したのだ。 「あなた、主治医でしょう? 一緒に来て」
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