0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺、足助守は冬の長期休暇中に、福岡の桜川多喜の家に遊びに行ってみた。
得意の突撃訪問で。
朝6時にピンポーン!とチャイムを鳴らす。
しかし、誰も出ない。
しかたない。隆兄ちゃんのとこいくかぁ。と、引き返そうとしていた…そのとき、
「やあ!守じゃないか。来てくれたのか?嬉しいなぁ~!」
チャリに乗った多喜が颯爽と登場した。
「多喜ちゃん…まだ新聞配達のバイトしてたんだね~」
「当たり前だ!金ねぇんだよ!」
「それよりさ~、梨帆ちゃんはいないの?」
「いや…いるけどまだ寝てると思う…」
「俺さ~ここで何時間待ってたと思う?1時間だよ?」
嘘だけど。
「な、なにぃ!?こんな寒い中…。ほんとごめん!」
「ひどいよね、多喜ちゃんって。俺を殺したいの?」
「違うっ!…僕が悪かった。とりあえず家入れよ」
俺が突撃訪問したのが悪いんだけどね。ついいじめちゃったなぁ~。それに気づかない多喜はバカ?
多喜に案内され家へ入った。
「うち、コタツしかないぞ」
「え~寒い!」
「しかも今電源入れたし」
「最悪!」
とか言いながらコタツに入った。まだ暖まってないから不快だ…!
「ほら、お茶。これ飲んであったまれよ」
「ありがと~!ま、お客様にこれくらいするのは普通だよね」
「まぁ…そうだな」
「ところで梨帆ちゃんは?」
「あぁ、起こしてくるよ」
「ありがと~」
とか言いながらこっそりついていき、多喜夫妻の寝室のドアに耳を当ててみた。
「起きろ~!守来てるぞ!」
「やだー眠いよぅ」
「まったく。守はなぁ!わざわざ僕のために、貴重な休みを使ってまできてくれたんだぞ!」
「ふぇ~?むにゃむにゃ…守さん!?わぁ~来てくれたの?」
「い、いきなり起きるな!ってか今頃反応すんな!」
「え?もうお家に来てるのぉ?」
「あぁ…そうだ。ちゃんと着替えろよ!」
「はぁ~い」
「髪も結んで!」
「はぃはぃ~」
ドアを開けた多喜と会う。
「あれ、守。なんでここに?…ごめんな!あいつ今起きて…」
「あは!普通に聞いてたよ。多喜ちゃんっておはよーのキスしないの~?」
「…やめてくれ。朝飯今から作るからな」
多喜に話流されたし。しかもちょっと照れたか?うざーい。
「守さん!おはよーございます!」
梨帆ちゃんがやっと登場した。
「梨帆ちゃ~ん!相変わらず綺麗だねぇ」
「えへっ!そんなことないです~」
「まじかわいい~!俺と付き合う?」
「え?」
きょとんとする梨帆ちゃん。
「守…。人の妻口説くな」
キッチンから話す多喜は少し怒ってる気がした。
「ごめんごめん!梨帆ちゃんがあんまりにもかわいいからさ~つい!」
「やだぁ~守さんったら!」
梨帆ちゃんが照れるとかわいいんだけどね。
「おい、作るの手伝えよ」
「あ、忘れてたぁ~ごめーん」
二人ともキッチン行ってしまった。見えるけど。そんで、朝ご飯は…餃子みたい。あぁ~全然食いたくないぞ。
「梨帆ね~この前保育園の先生にかわいい方ですねって言われたよ!」
「ふぅ~ん。それが?」
「嬉しかったの」
「あっそ。僕は保育園ではかっこいい方ですねって毎日のように言われるぞ!僕って、やっぱりかっこいい!」
「それただの妄想でしょ?」
「違う!まじだ」
「え~?嘘つき!ナルタキ~!」
「バカ。何言ってるんだ!僕は桜川多喜だぁ~!」
「もぉ!うるさいよ~」
完全に二人の世界に入ってしまっている。俺は空気かよ。しょうがない、子供部屋に逃げるしかないと思っていたら…中から出てきた。
「あ!守お兄ちゃん!」
飛び出してきたのは、桜川家長男の梨喜。
「梨喜!元気~?」
「うん!」
「梨多は?」
梨多は長女の名前だ。
「お休みだからまだ寝てるよ」
「萬帆ちゃんも?」
萬帆ちゃんは次女。まだ赤ちゃんだ。
「うん!」
「ねぇ~梨喜!パパとママってよく喧嘩してるよね?心配じゃない?」
「パパがね、けんかするのは仲良しだからって言ってたよ」
「え?それ…パパが言ったの?」
「うん!」
恥ずかしい多喜…。そうゆーさりげないとこがなんか、むかつく!
子供部屋で寝ている子供たちをちらっと見てから、荷物をまとめて多喜の家を出ることにした。
「守お兄ちゃんまたね」
玄関まで、梨喜はきてくれた。多喜達は気づいてない。
「パパたちによろしくね!」
俺はさっと家から離れた。
…幸せって感じでなんかむかつく。
多喜に嫉妬してしまう俺も嫌だ。
最初のコメントを投稿しよう!