守の訪問

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俺、足助守は冬の長期休暇中に、福岡の桜川多喜の家に遊びに行ってみた。 得意の突撃訪問で。 朝6時にピンポーン!とチャイムを鳴らす。 しかし、誰も出ない。 しかたない。(りゅう)兄ちゃんのとこいくかぁ。と、引き返そうとしていた…そのとき、  「やあ!守じゃないか。来てくれたのか?嬉しいなぁ~!」 チャリに乗った多喜が颯爽と登場した。 「多喜ちゃん…まだ新聞配達のバイトしてたんだね~」 「当たり前だ!金ねぇんだよ!」 「それよりさ~、梨帆ちゃんはいないの?」 「いや…いるけどまだ寝てると思う…」 「俺さ~ここで何時間待ってたと思う?1時間だよ?」 嘘だけど。 「な、なにぃ!?こんな寒い中…。ほんとごめん!」 「ひどいよね、多喜ちゃんって。俺を殺したいの?」 「違うっ!…僕が悪かった。とりあえず家入れよ」 俺が突撃訪問したのが悪いんだけどね。ついいじめちゃったなぁ~。それに気づかない多喜はバカ? 多喜に案内され家へ入った。 「うち、コタツしかないぞ」 「え~寒い!」 「しかも今電源入れたし」 「最悪!」 とか言いながらコタツに入った。まだ暖まってないから不快だ…! 「ほら、お茶。これ飲んであったまれよ」 「ありがと~!ま、お客様にこれくらいするのは普通だよね」 「まぁ…そうだな」 「ところで梨帆ちゃんは?」 「あぁ、起こしてくるよ」 「ありがと~」 とか言いながらこっそりついていき、多喜夫妻の寝室のドアに耳を当ててみた。 「起きろ~!守来てるぞ!」 「やだー眠いよぅ」 「まったく。守はなぁ!わざわざ僕のために、貴重な休みを使ってまできてくれたんだぞ!」 「ふぇ~?むにゃむにゃ…守さん!?わぁ~来てくれたの?」 「い、いきなり起きるな!ってか今頃反応すんな!」 「え?もうお家に来てるのぉ?」 「あぁ…そうだ。ちゃんと着替えろよ!」 「はぁ~い」 「髪も結んで!」 「はぃはぃ~」 ドアを開けた多喜と会う。 「あれ、守。なんでここに?…ごめんな!あいつ今起きて…」 「あは!普通に聞いてたよ。多喜ちゃんっておはよーのキスしないの~?」 「…やめてくれ。朝飯今から作るからな」 多喜に話流されたし。しかもちょっと照れたか?うざーい。 「守さん!おはよーございます!」 梨帆ちゃんがやっと登場した。 「梨帆ちゃ~ん!相変わらず綺麗だねぇ」 「えへっ!そんなことないです~」 「まじかわいい~!俺と付き合う?」 「え?」 きょとんとする梨帆ちゃん。 「守…。人の妻口説くな」 キッチンから話す多喜は少し怒ってる気がした。 「ごめんごめん!梨帆ちゃんがあんまりにもかわいいからさ~つい!」 「やだぁ~守さんったら!」 梨帆ちゃんが照れるとかわいいんだけどね。 「おい、作るの手伝えよ」 「あ、忘れてたぁ~ごめーん」 二人ともキッチン行ってしまった。見えるけど。そんで、朝ご飯は…餃子みたい。あぁ~全然食いたくないぞ。 「梨帆ね~この前保育園の先生にかわいい方ですねって言われたよ!」 「ふぅ~ん。それが?」 「嬉しかったの」 「あっそ。僕は保育園ではかっこいい方ですねって毎日のように言われるぞ!僕って、やっぱりかっこいい!」 「それただの妄想でしょ?」 「違う!まじだ」 「え~?嘘つき!ナルタキ~!」 「バカ。何言ってるんだ!僕は桜川多喜だぁ~!」 「もぉ!うるさいよ~」 完全に二人の世界に入ってしまっている。俺は空気かよ。しょうがない、子供部屋に逃げるしかないと思っていたら…中から出てきた。 「あ!守お兄ちゃん!」 飛び出してきたのは、桜川家長男の梨喜。 「梨喜!元気~?」 「うん!」 「梨多は?」 梨多は長女の名前だ。 「お休みだからまだ寝てるよ」 「萬帆(まほ)ちゃんも?」 萬帆ちゃんは次女。まだ赤ちゃんだ。 「うん!」 「ねぇ~梨喜!パパとママってよく喧嘩してるよね?心配じゃない?」 「パパがね、けんかするのは仲良しだからって言ってたよ」 「え?それ…パパが言ったの?」 「うん!」 恥ずかしい多喜…。そうゆーさりげないとこがなんか、むかつく! 子供部屋で寝ている子供たちをちらっと見てから、荷物をまとめて多喜の家を出ることにした。 「守お兄ちゃんまたね」 玄関まで、梨喜はきてくれた。多喜達は気づいてない。 「パパたちによろしくね!」 俺はさっと家から離れた。 …幸せって感じでなんかむかつく。 多喜に嫉妬してしまう俺も嫌だ。
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