0人が本棚に入れています
本棚に追加
「多喜、実は私ね…不倫してるの」
「………ばばばか言ってんじゃねぇぞ!」
普段、妻が言わなそうなセリフに、夫多喜は動揺した。
「子供もできちゃってぇ~」
「は…はぁ?!」
「で、相手は~」
次々に話される。もう、聞くことしかできない。
「零くんなの」
それを聞くなり、ぶっ殺すと思わずにはいられなかった。
「なぁ~んてね!うっそ~」
「…!?嘘だとぉ!?」
「当たり前じゃーん!」
陽気に答える妻梨帆であった。
「ふざけやがって…!騙したな」
「だって~零くんと考えたんだよ?許してっ」
零の名前が出るだけで腹が立った。
「ごめんねっ!びっくりした?」
「あたりめぇだこら」
「だってエイプリルフールじゃない?ね?」
「ね?…じゃねぇ~。そんな文化日本にはない!」
「わぁ~やっぱ怒った~」
やっぱって…じゃあ言うなよと心の中でつぶやいた。
その後、多喜は零と塾で会った。
「零くん…余計なことしてくれたな…」
「え…すみません。なんのことでしょうか?」
「ふざけんな。梨帆に余計なこと吹き込んだだろが!」
「え…あれ?ですか?不倫とかなんとか」
「そうだ!」
「冗談ですよ?」
「…わかってる!が、そんなこと教えなくていいだろ?」
「…すみません。教えてはいませんが…なぜかそんな話をしておりまして」
本気で怒っている多喜に驚いた。真に受けるタイプということを確信した零であった。
「まったくだ。もうこんなことするな」
それ以来、エイプリルフールについては桜川家では触れていないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!