0人が本棚に入れています
本棚に追加
餃子
「おはよ~。早いね」
「やぁ!朝ご飯作ったぞ。ほら!」
なにやら香ばしい臭いがただよってきた。それは、机に置かれた食べ物からしている。
「…え~。朝から餃子作ったの?」
大皿に餃子がぐるりとまるーく並んでいる。
「なんだ?僕の餃子を食えないと言うのか?」
「そうじゃなくて。朝からそんな油っぽいの食べたくないの!子供たちも嫌がるよ?」
「なにぃ?お前ひどいな。僕が一生懸命作ったのに…。絶品なのに」
「…話聞いてる?」
「お前こそ聞いてないんじゃないか?」
「聞いてるよ!バカ!ナルタキ!」
「うるさい!僕は多喜『たき》だ。ナルタキじゃない!」
「意味分かんない!」
騒がしくしていたところ、とことこと足音が聞こえた。
「おはよ~」
「やぁ!おはよう!僕が作った餃子を食べてくれ」
子供達が起きてきたところ、多喜はすかさず餃子の置いてある机に誘導した。さらに、餃子を取り分けた。
「美味しくないかもよ~!パパ初めて作ったし」
「なにぃ?食う前からまずいというのか!ありえないな。僕が何から何まですべて作った。小暮に教わったから間違いない!さぁ、食べてくれ!」
小暮というのは、料理人並みに料理上手な多喜の友人である。
まだ寝起きの息子、梨喜は、なんとなく口に入れた。
「おいし~」
「ほらな!」
梨帆の顔を見ながらどうだ!といっている。
「うっ…。じゃあママも食べてみよっかな。…ん?」
梨帆は言いようのない微妙な味に困惑した。
「うまいだろ?じゃ僕も食べてみるよ。…ん~?」
自分で作ったものだが、多喜は言い表せないような味に微妙としか思えなかった。梨帆を見たら、彼女もそんな顔をしていた。
「あはは~」
多喜は笑うしかなかった。
「あはは~」
それにつられて梨帆も笑った。
「パパたち仲良しだね!」
それを見ていた梨喜も笑った。
「当たり前だ!」
「ちょっと!変なこと言わないでよ~」
「どこが変なんだ?」
「もうっ!バカ多喜!」
「僕は多喜だ!しかもバカじゃない。天才だ!」
「きもいんだけど」
「なにぃ~!きもくない。かっこいいだろ?」
「はぁ?だからナルって言われるんだよ!バ~カ!」
「おいしいね」
そんなことは気にせずに、もう一人の子供梨多は餃子をぱくりと食べていた。
「だろ!?さすがだろ?」
「ナルタキ、梨帆を無視するな~!」
梨帆はべしっと多喜の頬を叩いた。
「暴力反対!訴えてやる!」
「も~!」
梨喜はなんとなく餃子を食べながら、二人を見ていた。仲良しだなぁと。
朝からラブラブな桜川夫婦であった。
最初のコメントを投稿しよう!