餃子

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餃子

「おはよ~。早いね」 「やぁ!朝ご飯作ったぞ。ほら!」 なにやら香ばしい臭いがただよってきた。それは、机に置かれた食べ物からしている。 「…え~。朝から餃子作ったの?」 大皿に餃子がぐるりとまるーく並んでいる。 「なんだ?僕の餃子を食えないと言うのか?」 「そうじゃなくて。朝からそんな油っぽいの食べたくないの!子供たちも嫌がるよ?」 「なにぃ?お前ひどいな。僕が一生懸命作ったのに…。絶品なのに」 「…話聞いてる?」 「お前こそ聞いてないんじゃないか?」 「聞いてるよ!バカ!ナルタキ!」 「うるさい!僕は多喜『たき》だ。ナルタキじゃない!」 「意味分かんない!」 騒がしくしていたところ、とことこと足音が聞こえた。 「おはよ~」 「やぁ!おはよう!僕が作った餃子を食べてくれ」 子供達が起きてきたところ、多喜はすかさず餃子の置いてある机に誘導した。さらに、餃子を取り分けた。 「美味しくないかもよ~!パパ初めて作ったし」 「なにぃ?食う前からまずいというのか!ありえないな。僕が何から何まですべて作った。小暮(こぐれ)に教わったから間違いない!さぁ、食べてくれ!」 小暮というのは、料理人並みに料理上手な多喜の友人である。 まだ寝起きの息子、梨喜(りき)は、なんとなく口に入れた。 「おいし~」 「ほらな!」 梨帆(りほ)の顔を見ながらどうだ!といっている。 「うっ…。じゃあママも食べてみよっかな。…ん?」 梨帆は言いようのない微妙な味に困惑した。 「うまいだろ?じゃ僕も食べてみるよ。…ん~?」 自分で作ったものだが、多喜は言い表せないような味に微妙としか思えなかった。梨帆を見たら、彼女もそんな顔をしていた。 「あはは~」 多喜は笑うしかなかった。 「あはは~」 それにつられて梨帆も笑った。 「パパたち仲良しだね!」 それを見ていた梨喜も笑った。 「当たり前だ!」 「ちょっと!変なこと言わないでよ~」 「どこが変なんだ?」 「もうっ!バカ多喜!」 「僕は多喜だ!しかもバカじゃない。天才だ!」 「きもいんだけど」 「なにぃ~!きもくない。かっこいいだろ?」 「はぁ?だからナルって言われるんだよ!バ~カ!」 「おいしいね」 そんなことは気にせずに、もう一人の子供梨多(りた)は餃子をぱくりと食べていた。 「だろ!?さすがだろ?」 「ナルタキ、梨帆を無視するな~!」 梨帆はべしっと多喜の頬を叩いた。 「暴力反対!訴えてやる!」 「も~!」 梨喜はなんとなく餃子を食べながら、二人を見ていた。仲良しだなぁと。 朝からラブラブな桜川(さくらかわ)夫婦であった。
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