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「わ、我が校の生徒の中で……とても重大な出来事を起こしてしまった生徒がいます」
校長の言葉に、体育館の空気がざわつき始める。
木曜日なのに、急遽行われた全校集会。
私が入学してから、そして聞けばこの学校が開校して以来初めてだというこの事態に、ことの重要さが伺える。
一体、誰だろう。
私は考える。
以前この高校の生徒がオリンピックの日本代表に選ばれた時でさえ、その発表は翌週月曜日にいつも通り行われた全校集会の時だった。
つまり今回の出来事は、日本代表に選ばれることよりも重大なこと。あるいは名誉あることなのかもしれない。けれど……
私はもう一度瞼を閉じると、真っ暗になった世界の中で静かに息を整える。そして、知っている限りの生徒の顔を思い浮かべてみた。
全校生徒800人以上いる日本屈指の名門私立高校、この天堂高校といえど、私の知る限り、オリンピックを超えるような才能を持った生徒がいるなんて聞いたことはない。
いや、もしかしたら私の交友関係以外のところで偉大な才能を持つ生徒がいるのかもしれないけれど、残念ながら、私の耳にはまだ入ってきてはいない。
今度機会があれば、是非ともお近づきにならなければ。
己の品格と心を磨いていくには、常に自分よりも優れた人と一緒にいること。これもまた、お母様の教えだ。
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