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不幸少年ツナギくん
どうせ死ぬなら、誰かを守って死にたい。
少し前から俺はそんな風な考えを持って生きていた。
明日、高校の入学式を控える、いわゆるお年頃ですから、そんな考えを持つ理由なんて単純である。
ついこの前クリアしたテレビゲームの主人公がそういう性格だったとか。
深夜に放送されていたアメリカの連続ドラマに出ていた渋くてカッコいい俳優が演じていたキャラクターがそういう退場の仕方だったとか。
そんな程度の理由であるが、出来ることならば、まるでアメコミのヒーローのように颯爽と現れて美少女のピンチを救う。
そういうチャンスが自分にも訪れないかと考えていた矢先。
俺の願いは現実のものとなった。
「ぶっころしてやらあっ!!」
「ぐああっ!!?」
宇都宮駅前。川沿いの通りから中央の交差点に入った瞬間、ちょっと尋常ではない男の叫び声が聞こえた。
その声の方向を見ると、黒いトレーナー姿の男が鈍く光る刃物を振り回していたのだ。
キャー!! みたいな悲鳴は聞こえない。その周りには10人ばかりの通行人がいるのだが、皆言葉を失っている状況。
刃物を手にし狂気に満ちた通り魔の男とその刃を受け、腹部から血を流し倒れているサラリーマンの男。
その現実に多くの人達は信じることが出来ないという状態だったが、俺の目にこれほどまでに鮮明に写った景色は他になかった。
そう感じてしまったのだ。
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