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「うおらああぁっ!! お前も死ね!!」
通り魔の振るった刃物が今度はふくよかなおばちゃんに向かって振り下ろされる。
「ぎゃああぁぁっ!!?」
普段からどんな美味しいものをたべているのだろうか。年甲斐もなく、まるで北関東ビクトリーズのユニフォームのように真っピンクなお洋服をきたおばちゃん。
その背中に刃物が突き刺さり、お年を召した猫の尻尾を間違えて踏んでしまった時のようなうめき声が上がった。
深い青色に、銀色のローマ字。どこかのブランドかは分からないが、質の良さそうな紙袋を宙に投げるようにして、真っピンクのおばちゃんもアスファルトの上に突っ伏した。
ハムの塊を床に落としたような。わりとそんな感じの音だった。
「……次は、お前だああぁっ!!」
2人を刺した血に染まった刃物をもった通り魔の男が、次の標的に選んだのは、信号機の側に立っていた女の子だった。
ヒラヒラと裾の軽そうなクリーム色のスカートに、青いシャツ。ツヤツヤとした髪の毛が肩まで伸びていて、目は大きく唇もふっくらとしていて、顔立ちはまあまあ。
自分の命を投げ出すには、まあ合格ラインだろうと、俺は駆け出した。
中盤でボールを失ってカウンターを食らった時の左サイドバックのような気持ち。
ラインのずれた2人のセンターバックの間に通されようとしている相手1トップへのパスコースが見えたのだ。
そう。最近はサッカーゲームにハマっているのだ。
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