30人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「よもや護法魔王尊であられますか?」
嫌味の一つでも零さずにはいられない。
『何だ?敬いたければ敬うがいい』
口角を不遜に上げる様が腹立たしく、涼は酒瓶を掻っ攫うや、一気に呷った。
『お、おいっ!それは神酒ぞ。人が口にすれば……』
酒の神、久斯神が、荒れ狂う鬼神に手を焼いた末に献上してきた酒だった。人のそれとは違い、度数が桁外れに高い。
「……!!!」
涼音は白い顔を真っ赤にさせて、無言のままひっくり返る。
先程まで泰然と構えていた鬼神が、この時ばかりは酷く慌てた顔で涼音の後頭部を守ったことなど、きっと当の本人は覚えてもいない。
「さ……三途の川が……見えまする」
目を回す涼音の額に、その大きな掌を当てながら、『この阿呆ぅ』と零す声音の優しさに、擽られる心地がしたことなど、鬼神はきっと知る由も無いのだ。
最初のコメントを投稿しよう!