護る者の眼

4/12
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「よもや護法魔王尊であられますか?」 嫌味の一つでも零さずにはいられない。 『何だ?敬いたければ敬うがいい』 口角を不遜に上げる様が腹立たしく、涼は酒瓶を掻っ攫うや、一気に呷った。 『お、おいっ!それは神酒ぞ。人が口にすれば……』 酒の神、久斯神(くすのかみ)が、荒れ狂う鬼神に手を焼いた末に献上してきた酒だった。人のそれとは違い、度数が桁外れに高い。 「……!!!」 涼音は白い顔を真っ赤にさせて、無言のままひっくり返る。  先程まで泰然と構えていた鬼神が、この時ばかりは酷く慌てた顔で涼音の後頭部を守ったことなど、きっと当の本人は覚えてもいない。 「さ……三途の川が……見えまする」 目を回す涼音の額に、その大きな掌を当てながら、『この阿呆ぅ』と零す声音の優しさに、擽られる心地がしたことなど、鬼神はきっと知る由も無いのだ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!