運命

2/20
2766人が本棚に入れています
本棚に追加
/361ページ
ーーーーーーーー 高校時代、少し低い背と細い体、それ以外あいつは完璧なαだった。 成績も常にトップだったし、運動能力も高かった。2年の時から生徒会長を務める統率力もあった。 αだということに誇りを持っているような、茜はそんな奴だった。 一方俺にとって学業やバース性はそんなに重要じゃなかった。無難に学生生活をこなし大学を出て父と兄のような警察官になる、そんな漠然とした未来を見ていたからかもしれない。 1年の時一度だけ、茜は病欠明けのテストでトップの座から落ちてしまった事がある。いつも二番にいた俺がトップになった時だ。 廊下に張り出された順位を見た茜が、一瞬だけ不安そうな泣きそうな顔をしたのを、俺は見てしまった。それは本当に一瞬で 「あやき、るい・・・」 すぐに感情の無い瞳で一番上に書かれた俺の名を見つめ呟いた。 おそらく茜が、俺の名前を認識した最初の瞬間だったんだと思う。 俺はたぶん、その時から茜に惹かれ始めていた。
/361ページ

最初のコメントを投稿しよう!