2781人が本棚に入れています
本棚に追加
月日は流れ、茜の姿を見なくなって12年が経とうとしていた。
その間にも色んなことがあったけれど、結局俺は茜を忘れられないままだった。
ポケットの中のスマホが震える。
『綾木さん? マムの佐藤ですー』
「お疲れ様です。依頼ですか?」
『そうでーす。田中様の契約、今週いっぱいでしたよね?来週から月水金14~18時、久遠様と仰られる方からのご依頼です』
久遠・・・
茜と同じ苗字を聞くだけで心音が加速する。
そんなはずがあるわけないのに。
「わかりました」
『マップと簡単な顧客データ、送っとくんで確認しといてくださいね。初回 月曜14時、時間厳守でお願いしますね』
電話を切ってすぐ、佐藤さんからのメッセージが送られてくる。
開いた瞬間、加速した心音が途切れた気がした。
ご依頼主 久遠 茜 様
これは運命じゃない、と俺は分かっていた。
だけど、信じたかった。この恋を運命にする、そう思った。
最初のコメントを投稿しよう!