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夏休みも半ばにさしかかる頃、ハナは、この世界から姿を消した。
ぼくの見ていないところで、
知らないあいだに、
理由もわからないままに、
殺されたんだ。
警察は、手がかりをさがすためにハナの身元を洗いざらいさらったが、当然くもりひとつなかった。
もちろんぼくの存在もわかっていて調べられたが、ぼくにはアリバイがあった。
夏休みをハナと有意義に過ごすため、一緒にいる以外の時間をほとんど、コンビニのバイトに費やしていたから。
犯人は捕まらなかった。
警察のほうでは、最終的には数ヶ月かけて犯人の目星をつけたらしいけれど、証拠がそろわなかった。
空気に溶けて消えてしまう皆の言葉だけだったら、口裏を合わせたあの連中が犯人だと、こんなにも特定できるのに。
ぼくとハナ、ふたりで立てた夏休みの計画は、半分しか一緒にできなかった。ハナがいなくなってしまう夏休みなんて、計画になかった。
悲しみの中でぼくは、すべてに手がつかなかった。
夏休みが終わり、二学期に入った。
クリスマスも正月も、ぼくとハナの誕生日も通り過ぎて、新しい学年になった。
ひとりの人間が消えても、時間の流れは変わらないんだ。
ハナを失ったぼくは、いま、独りで高校二年生の夏休みを迎えた。
一学期の通知表を受け取った。
たった今から夏休みだ。
さあ。
ぼくの立てた計画通り、これからヤツらへの復讐の夏休みだ。
END
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