光あれ

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
 前々から計画を練り、今日は初めてカトリックの教会を訪れた。  簡素な下駄箱、よく磨かれて日光の差し込むステンドグラスや、掃除の行き届いた礼拝堂からは好もしい印象を受けた。既にプログラムが始まっており、私はしずしずと後方の席に座る。  光あれ、と聖歌隊が歌っていた。その中に、音大時代の友人がいた。彼女のやわらかなソプラノはよく通る。私からは見えないが、ふくふくとした頬は上気することもなく、慣れた喉で難なく歌っているのだろう。  ──光あれ、光あれ、光あれ。  この日の差し込む教会にサングラスは不要だろうか。私はそろそろと黒いサングラスを外し、瞼を開き、完全な闇と対峙した。  ──光あれ、光あれ、光あれ。  そうだ、光よ、どこまでも、地を貫いて、光あれ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!