「大好き」はまた会う時に

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「ルミナ様を見つけ出せええええええええ!!」 凄まじい数と勢いでやって来たのは魔物騎士たちだった。黒い甲冑を纏った馬もデュラハンも、必死なその様はまるで何かに脅されているようでさえあった。 「……私は行かねばなりません。この茂みを抜ければ人間の村に帰れます、さあ早く」 「待て」 立ち上がろうとした少女の腕を掴む。触れれば折れてしまいそうに華奢だった。 「……貴様は何者だ? なぜ追われている」 「……」 少女は、その椿色の瞳でオスクロルを見つめた。それから視線を外し、静かな声で言う。 「……私の正体はいずれ分かるでしょう。今はお答えしかねます、勇者さん」 「……」 最後に小さく微笑みかけると、少女は立ち上がった。「ルミナ様!!」と声が上がる中、魔物の訝しげな言葉が聞こえてきた。 「……人間の匂いがしますよ。脱走されている間に何をなさっていたのです?」 すると、彼女は答えた。 だけどそれは、氷の如く冷たく高圧的な、全く別人格の声だった。 「……あら、脱走なんて聞き捨てならないわね。城にいる最中、人間が目に入ったから始末してきたのよ。消し炭にでもされたいのかしら」 「し、失礼致しました」 「まあ良いわ。お父様を待たせては悪いでしょうし、早く戻るわよ」 「はッ!!!」 幾重にも鎧の音と声が響くと、彼等と少女は嵐のように過ぎ去っていった。この時のオスクロルは、ただ、呆然と見ることしかできなかった。
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