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第二章 その1
翌日も、ミシオン王子は村を去ることなく、農夫──ルーメンという名でした──の小屋に留まりました。そして、この日は町に行くことなく家の仕事をするヴォロンテーヌやルーメンと共に、汗水を垂らして働きました。その翌日も、そのまた翌日も、王子は村に留まって、ルーメンやヴォロンテーヌと働きました。
ルーメンが心配して、きっと王宮では大騒ぎになっているだろうからと言って、城に帰ることを促しても、王子は首を横に振るだけでした。ルーメンが困ったような顔をしながら、せめて手紙を出してはどうかと提案しても、王子は首を縦には振りませんでした。なぜだか理由はわかりませんでしたが、ミシオン王子にはそうすることが──王宮と完全に離れていることが、自分には必要なのだと強く信じていたのです。
そうしてミシオン王子は村に留まり続けました。その間にルーメンと共に一生懸命働いたおかげで、また昼となく夜となく交わされるルーメンとの会話のおかげで、いろいろなことを知り、深く考え、思うようになりました。それはまるで自分の体という器に、清らかな水が満ちていくような感覚でした。そしてまた日々思考することで王子の心は耕され、いくらでも水を蓄えられるのでした。ミシオン王子は自分が日ごとに賢くなっていくように感じました。
はじめの頃は少しでも重いものや固いものを持つと、すぐに皮がむけて血が滲み、血豆ができていた手のひらも、働くうちに強く丈夫になりました。
王宮を出たときに着ていた王子の衣装はすっかり擦り切れてしまいましたが、ヴォロンテーヌがその都度、心をこめて丁寧に繕ってくれていました。王子はそんなとき、針と糸で器用に自分の衣装を作ってくれているヴォロンテーヌの美しい横顔を見つめながら、二言三言、言葉を交わす瞬間に、言いようのない喜びとときめきを感じました。
そうした時間の何気ない会話から、ヴォロンテーヌが非常に賢く、優しい心を持っていることがわかると、ミシオン王子はますますヴォロンテーヌに惹かれていくのでした。
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