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「やっと行ったな」
「ですね」
「あ、そうだ」
くるりと頭をこちらへ向けた次屋が笑顔で尋ねてきた。
「玉川先生って、やっぱり面倒くさいタイプ?」
「面倒くさいって?」
「だって、一日中、あんな感じだろ? 家でもそうなの?」
「……ど、どうでしょう」
「水窪先生も大変だよね。ヤクザに追い掛けられたり、ヤクザみたいな医者に迫られたり。いっそのこと教授の娘とかと付き合っちゃえばいいんじゃないの?」
「それは駄目です」
「なんで?」
「なんでって、それは――」
玉川のことを考えて言葉に詰まる。
恋人としてずっと傍にいたい。死ぬまで一緒にいたい。
――離れたくない。
そんな簡単な言葉が心に浮かぶ。
これまでの奇跡のような日々を思い出して、何があっても別れたくないと思った。
――それに……。
玉川の医師としての成功を見てみたいし、教授になった玉川の隣に自分もいたい。
父が叶えられなかった夢を叶えたかった。
それが責務であり二人の正しい道筋だと思っているが……。
「なんだ。大好きなんじゃん」
「え?」
「玉川先生のこと大好きなんだ。へぇ」
「あ、あの――」
「オペだけじゃなく、やっぱりエッチも上手いの?」
気軽にそう言われて春馬はコーヒーを吹いた。
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