『恋愛病棟 ‐シェーマの告白‐』番外編

11/27

577人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「やっと行ったな」 「ですね」 「あ、そうだ」  くるりと頭をこちらへ向けた次屋が笑顔で尋ねてきた。 「玉川先生って、やっぱり面倒くさいタイプ?」 「面倒くさいって?」 「だって、一日中、あんな感じだろ? 家でもそうなの?」 「……ど、どうでしょう」 「水窪先生も大変だよね。ヤクザに追い掛けられたり、ヤクザみたいな医者に迫られたり。いっそのこと教授の娘とかと付き合っちゃえばいいんじゃないの?」 「それは駄目です」 「なんで?」 「なんでって、それは――」  玉川のことを考えて言葉に詰まる。  恋人としてずっと傍にいたい。死ぬまで一緒にいたい。  ――離れたくない。  そんな簡単な言葉が心に浮かぶ。  これまでの奇跡のような日々を思い出して、何があっても別れたくないと思った。  ――それに……。  玉川の医師としての成功を見てみたいし、教授になった玉川の隣に自分もいたい。  父が叶えられなかった夢を叶えたかった。  それが責務であり二人の正しい道筋だと思っているが……。 「なんだ。大好きなんじゃん」 「え?」 「玉川先生のこと大好きなんだ。へぇ」 「あ、あの――」 「オペだけじゃなく、やっぱりエッチも上手いの?」  気軽にそう言われて春馬はコーヒーを吹いた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

577人が本棚に入れています
本棚に追加