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「君はこれを……あ、開けないでフォローできるか?」
「もちろんできます。今すぐそこを退いて頂ければの話ですが」
「あ、あは。そうか。じゃ、俺は出ようかな。あはは」
青田は額に汗を滲ませながらみっともない顔で笑った。
「気にしないで下さい。教授が執刀したということで片付けますし、うちのダヴィンチは第四世代の最新機器なので、操作に慣れてらっしゃらなかったのでは?」
「あ、ああ。そ、そうなんだ。よく分かるな。第三世代のダヴィンチでは食道癌の執刀をしたことがあったんだが、ど、どうもそれと操作が違って――」
「そうですか。では、お先にどうぞ。お疲れ様でした」
「あ、ああ。お疲れ」
玉川が恭しく礼をすると、青田は汗を拭いながら早々と外へ出た。同時のタイミングで看護師の水名がカートを押しながら戻って来る。
「なんですか、あれ」
「気にしなくていいよ。青田の坊ちゃん、名前のとおり顔が真っ青で可哀相だったからさ」
「またまたー。玉川先生、ずばっとやっちゃって下さいよ。あんなテクなしのドクターさっさと追い出して下さいね」
「主任教授のお坊ちゃまだからなぁ。他大学から誘致された殿様教授に喧嘩売りたくないし」
「先生もお坊ちゃまだったじゃないですか」
「昔の話だよ」
玉川と看護師は会話しながら器械の準備をしていく。春馬にも指示が飛んだ。
「えーっと、青田ちゃんが『開けずにお願い』ってことだから、このままいくね。ま、開けなくてもいけるけど。カメラ以外のアーム二本抜いちゃって。二ヶ所からポート入れて止血点を探す。水窪先生はコンソールに座って」
「分かりました」
春馬は操作席に座ってステレオビューワを覗き込んだ。出血のため画面が暗い。
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