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――ああ、やっぱり凄いな。
こうやってダヴィンチでオペができるのも玉川のおかげだ。
春馬は胸の内で呟いた。
玉川は早くから柏洋大学医学部付属病院にロボット手術の導入とその必要性を訴えた。手術支援ロボット・ダヴィンチはまず国内の泌尿器科で使用が認められた。前立腺癌手術に適応後、腎臓癌・肺癌・直腸癌・食道癌・子宮体癌と順次使用が認められ、現在では多くの科、症例で適応の対象となっている。
ロボット手術と言ってもロボットが手術するわけではない。外科医が操作台で動きを操作して、患者側に設置されている四本のアーム――そのカメラや複数の鉗子が遠隔で動くシステムだ。端的に言うと腹腔鏡の遠隔操作で、違うのはその繊細さだ。
ダヴィンチのコントローラーを三センチ動かせば鉗子は一センチ動く。
つまり人の手の三倍細かい動きができることになる。腹腔鏡なら直接的なアプローチしかできないが、ダヴィンチの場合は奥側からもアプローチができ、関節があることで可動範囲も広くなる。その分、下手な医師が操作を行うとやるミスも増大するというわけだ。
「うん。いいね。もうドレーンの準備しておいて」
「はい」
玉川が胆嚢の切除・摘出を終えた。春馬のサポートもあったが、動脈の処理を行うまで二十分も掛からなかった。
「閉腹処理」
「はい」
「いいね。お疲れ」
「お疲れ様です」
春馬がコンソールから顔を上げると笑顔の玉川と目が合った。
――ああ……。
今日も明るい太陽みたいな笑顔だ。この瞬間に言いようのない幸せを感じる。
玉川とともにオペができる喜びを噛み締め、同時にそんな男が自分の恋人であることを誇らしく思った。
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