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無事に胆嚢摘出術終えて術衣からスクラブに着替え、医局でのんびりしていると玉川に捕まった。
「春馬ー」
他に人がいないのをいいことに名前を呼びながら甘えてくる。
「ちょっと……病院では水窪先生と呼んで下さい。変に疑われても困りますから」
「そう?」
「そうです」
「誰もいないけど?」
「いなくてもです」
玉川がシュンとした顔で向かいの椅子に座る。自分の椅子ではなく先輩医である次屋の椅子だった。コーヒーが入った紙コップを手渡してくれる。
「あ、ありがとうございます。オペ上手くいってよかったですね」
「うん」
「さすが玉川先生だと改めて尊敬しました」
「ホントに? そんな顔してないけど」
「してます」
「してない」
「じゃあ、どんな顔すればいいんですか?」
「んー、右晋大好きー、みたいなやつないの?」
「ないです」
「なんで?」
玉川に抱きつかれそうになってさっと避ける。こういう時、キャスター付きの椅子は便利だ。コーヒーもこぼれていない。椅子の操作が上手くなっている自分に気づいて苦笑する。
「なんで俺のこと名前で呼んでくれないの?」
「年上ですし、尊敬するドクターですし、それに――」
「それに?」
「なんだか恥ずかしくて」
春馬は下を向いた。頬が熱くなるのを感じる。
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