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それを見たら、わたしの目にも涙が滲んできて、正直に言っていた。
「……わたし、本当はわかってたの。今年、奏ちゃんはわたしにプレゼントを持ってこない」
そう、ずっとわかっていた。
奏ちゃんがしてくれるキスは、優しいけど、それだけだ。仔猫や小鳥にするのと同じ。少し、同情の味もした。弦哉が言った通り。恋愛の感情なんかじゃない。
気づいていたけど、わざと知らないふりをしていたの。悲しかったから。
悲しすぎて、ワガママを言ってしまった。奏ちゃんの優しさに甘えて、困らせた。欲張らなければ、奏ちゃんはまだ一緒にいてくれたかもしれない。でも、それでは、奏ちゃんの笑顔はずっと悲しいままだ。
大好きな人には、いつだって心からの、とびきりの笑顔でいて欲しい。
「バカだなぁ、わたし……間違いだらけの恋なんかして」
ごめん。奏ちゃん。
わたしは、笑いながら、ポロポロと涙をこぼした。
「小夜子は、ちゃんと、いい恋したよ! 大丈夫だ!」
根拠なんて何もない、そればかりか、自分にとって何の得にもならない励ましを、目の前の弦哉は必死でしてくれる。
フライングも甚だしい、今年のサンタクロース。自分の想いに囚われて、動けないでいたわたしを、危険を冒して奪いにきてくれた。救いにきてくれた。
わたしの本当のサンタクロースは、まさか泥棒だったとは。
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