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「それは無理でしょ。奏佑さんは社会人だけど、小夜子はまだ高校一年生じゃん。それこそ犯罪だよ。大騒ぎ」
きーちゃんの指摘は正しくて、わたしはブスッと下唇を突き出した。
一旦家に帰って、自分の部屋にリュックを下ろしてから、制服のまま奏ちゃんの家へ向かった。先週借りたCDを返すためと、今年のクリスマスプレゼントの希望を伝えるためだ。
奏ちゃんの家は、お隣の一軒家。同じく戸建ての我が家から、百メートルも離れていない。すぐに玄関のピンポンを鳴らせる。
今日はお仕事がお休みって聞いていたし、玄関のドアを開けて出てくるのは、てっきり奏ちゃんだと思っていたのに、違った。
弦哉だった。奏ちゃんの弟だ。ガッカリだ。
「あからさまにガッカリって顔するなよ、うぜぇな」
弦哉は視力を悪くしそうな前髪の奥で、つんと吊り上がった目を細めた。
「なんで弦哉がもう家にいるの。しかも私服じゃん」
「お前が教室でいつまでもダラダラ喋ってるからだろ」
わたしと弦哉は同い年だ。しかも、同じ高校に通っている。
家が隣同士ということは、当然のことながら学区も一緒で、あげくに目クソ鼻クソの偏差値であるものだから、必然的な結果と言えなくもない。
「弦哉と話すの、時間のムダ。奏ちゃんは?」
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