泥棒がサンタクロース

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「時間のムダなら、オレに訊くんじゃねぇや。兄貴なら出かけてるよ。休みなんだから、デートじゃねぇの」 「いったい奏ちゃんが誰とデートするっていうの。わたしがここにいるのに」  訳のわからない言い分に、わたしまで目を渋く細めてしまう。 「お前さぁ、いいかげん、もうそういうのやめたら?」 「意味がわからない」 「目を覚ませよって言ってるの。二十二にもなった社会人の男がさ、六つも年下の女子コーセーを本気で相手にするかってことだよ」 「キスしたもん」  わたしが臆面もなく告白すると、弦哉は顔をひどく引きつらせた。 「お、オレとだってしただろ」 「ぶぁっか! 幼稚園児の振り向いたらぶつかっちゃった事故と、一緒にするない! てか、そんなのいつまでも覚えているな! 腹立つ!」  忘れたい過去を唐突に引き合いに出されて、ムダに心拍数が上がり、脇の下に気持ちの悪い汗をかいた。  そうだ。そういうのは、本当のキスって言わない。  奏ちゃんは、優しくこの唇に触れてくれた。壊れやすい宝物を扱うみたいに。大切なお姫様を眠りにつかせる時のように。  わたしがお願いすれば、いつだってそっとキスを落としてくれる。
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