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その夜、もう一度奏ちゃんに会いにいった。
夕方には弦哉がそばにいたから、おねだりしたプレゼントをバカにされそうだったし、奏ちゃんとのやり取りを長いこと眺めていられるのが気恥ずかしかった。CDだけを返した。
弦哉はお風呂の最中でもあるのか、ピンポンしたら顔を出したのは、おばさんだった。不思議なことに、奏ちゃんにも弦哉にも似ているその笑顔に挨拶してから、奏ちゃんの部屋を目指す。
「奏ちゃん、いる?」
声をかけるのと同時に、木目調のドアを開けた。ノックを忘れた、とあとから気づいたけど、どうせもう遅い。いいや、と開き直った。
「小夜子、もう十時だよ」
ベッドに腰かけたスウェット姿の奏ちゃんは、バスタオルで髪の毛をガシガシ拭いていた。忙しく開閉する目の下で、頬がうっすらフラミンゴ色に染まっている。
「知ってるし。あのね、毎年クリスマスにプレゼントをくれるでしょ?」
わたしはズカズカと部屋に侵入して、奏ちゃんの隣に座った。中学生の頃から使っているベッドのスプリングが、ギシギシとうなる。
「あぁ、プレゼントの希望? まだ先なんだから、明日にしたらよかったのに。今年は何が欲しいの?」
奏ちゃんは柔らかく目を細めて、わたしを見下ろす。そのしぐさも好き。
「奏ちゃん、わたし、プレゼントはいらない。お願いがあるの」
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