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「レイラ、そろそろ中に入りましょう」
夕焼け空にサラの赤い髪がより一層赤く染まっている。庭の隅にしゃがみ込んでいたレイラが青い目をキラキラさせながら駆けてくる。その後ろから黒猫がついてきた。
「お母さん! 見て!」
レイラはサラに花びらの細いオレンジの花束を差し出した。
「あら。きれいなお花ね」
サラが花束を受け取り、家の戸に手をかけた。強い風が吹いて、空が暗くなる。サラとレイラに続いて黒猫も家の中に入っていく。
小屋の外は嵐が来ていて、ガタガタと戸が音を立てている。テーブルの脇で黒猫がミルクを飲んでいる。サラが黒猫に顔を近づける。目が合う。黒猫の黒い目がきらりと光った。優しく撫で、口元に手を当てた。だらっとしていた尻尾をピンと張って、何処かへ行ってしまった。
テーブルの上には、野菜の煮込みスープ、照り焼きチキン、活けた花束が置いてある。レイラはチキンにかぶりつき、サラは静かにスープを飲んでいた。静かだった部屋にドンドンという戸を叩く音が響いた。
「何かしら、風の音じゃないみたいね」
「お客さん!?」
嬉しそうに目を輝かせるレイラ。
「まさか。こんな天気の日に」
サラは扉を少し開けた。びしょ濡れの男の子が雨風と共に中に倒れ込んできた。
「まあ大変」
男の子はそのまま気を失ってしまった。
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