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「じゃあもしかして、お父さんとお母さんと一緒に暮らす日も近いかもしれんね」
軽く言われたそんな言葉は、私の心に重く積もった。
何にも知らないくせに勝手なことばっかり言っちゃって。
返事もせずにつかみ取るように袋を手に取って、おばちゃんの『ありがとうねー』の声を背にして商店を出た。
坂道をずんずんと大股で下りていく。
イライラを吹き飛ばすかのように、イライラを助長させるかのように、わざと、ずんずんと。
今日だけは、人の少なさに感謝する。
こんな時ににこやかに笑顔で挨拶なんかできないし、こんな顔を誰にも見られたくはなかった。
「ただいまっ!」
その勢いのまま帰ったから、おばあちゃんにびっくりされた。
「おかえり。ずいぶん威勢良く帰ってきたね」
おばあちゃんの笑顔に、ようやく少し落ち着いた。
やっぱりおばあちゃんは私の癒やしだ。
お父さんのメールのことが気になって、帰ってきたお母さんの顔が見られなかった。
お母さんは鋭いから、私の変化にきっと気付いている。
でも、あのメールのことだけは絶対にお母さんに知られちゃいけないと思った。
私たちはいつだって後悔を繰り返す。
この事がまさかあんなに大変なことになるなんて、このときの私はまだ気付くはずもなかった。
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