第4章

19/19
前へ
/76ページ
次へ
「じゃあもしかして、お父さんとお母さんと一緒に暮らす日も近いかもしれんね」 軽く言われたそんな言葉は、私の心に重く積もった。 何にも知らないくせに勝手なことばっかり言っちゃって。 返事もせずにつかみ取るように袋を手に取って、おばちゃんの『ありがとうねー』の声を背にして商店を出た。 坂道をずんずんと大股で下りていく。 イライラを吹き飛ばすかのように、イライラを助長させるかのように、わざと、ずんずんと。 今日だけは、人の少なさに感謝する。 こんな時ににこやかに笑顔で挨拶なんかできないし、こんな顔を誰にも見られたくはなかった。 「ただいまっ!」 その勢いのまま帰ったから、おばあちゃんにびっくりされた。 「おかえり。ずいぶん威勢良く帰ってきたね」 おばあちゃんの笑顔に、ようやく少し落ち着いた。 やっぱりおばあちゃんは私の癒やしだ。 お父さんのメールのことが気になって、帰ってきたお母さんの顔が見られなかった。 お母さんは鋭いから、私の変化にきっと気付いている。 でも、あのメールのことだけは絶対にお母さんに知られちゃいけないと思った。 私たちはいつだって後悔を繰り返す。 この事がまさかあんなに大変なことになるなんて、このときの私はまだ気付くはずもなかった。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加