第1章

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「うちの後、美桜んちやったよね!あー!緊張するー!去年はお母さんと夏海先生が盛り上がっちゃってさー、先生夜ご飯まで食べていったけん!」 家庭訪問の期間は一週間程。 午前中授業で家に帰れるから、みんなのテンションも高い。 周りも賑やかな中、親友の葉月もさっきから喋りっぱなしだった。 「そうなの!?そんなことあるんだねー。でもホント、何言われちゃうのかなって、緊張するよねー」 六年生になり、担任の先生も変わった。 去年担任してくれた本田夏海先生は今年一年生の担任になり、相変わらず元気いっぱいに走り回っている。 今年担任になったのは男の先生で、何に対しても熱血な森隆史(たかふみ)先生だ。 年齢は確か38歳。 見た目は怖そうだから最初は大人しく様子を見ていたけれど、怒る時も、遊ぶ時も、何なら給食で残ったデザートのジャンケンすらも一生懸命な森先生と私たちが打ち解けるのはあっという間だった。 「じゃあ、歌音が来たら美桜んちに行くね!」 学校が早く終わった日は、近くの大きな公園の温室で宿題をするのが定番だ。 先に別れた歌音とも約束しているから、私も急いで準備をした。 「あー!美桜!先生まだ来てないよね!?」 外に出て葉月達を待っていると、ママがソワソワと外に出てきた。 「まだだよ。予定時間よりまだ30分もあるじゃん」 落ち着かないママは、玄関に飾られた鉢植えを無駄に細かく動かしている。 「先生時間に几帳面な人?コーヒーとお茶、どっちがいいかな?あ、今日はホットよりアイスがいいかもね」 四月だというのに、今日はまるで夏の日差しのようだ。
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