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思いがけない話題と恋バナで盛り上がったら、それまでのことはもうすっかり忘れてしまった。
というより、気にしすぎるのが嫌で意識的に頭の隅へと追いやってしまったのかもしれない。
その証拠に、次の朝待ち伏せしていた太一を見た瞬間にパパのメールのことが一気に頭の中に押し寄せてきた。
「おはよう、太一。わざわざ待っててくれたの?」
「おはよう。美桜が早く読みたいかと思って」
差し出された封筒をじっと見つめる。
「あ、この封筒姉ちゃんにもらったんだ」
シンプルだけど淡いピンクの封筒を気にしてか、太一が慌てて言った。
そうじゃなくて、封筒の中身が怖かっただけなんだけど。
「美桜、早めに受け取ってくれると助かる」
ハッとした。
両手で私の方に封筒を差し出す太一は、他人の目から見れば告白の真っ最中だと思われても仕方ない。
「あ!ごめん!」
誰からも見られていないだろうか。
辺りを見渡すと、遠くの方に何人か向かってきているのが見えた。
「ありがとう」
受け取ってみたものの、中身を確認するのが怖い。
早く知りたいような先延ばししたいような、複雑な気持ちでいっぱいだ。
「プリントするのに画面は見たけれど、メールの内容は読んでないから」
大丈夫。
太一のことは信じているから。
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