第4章

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いつ読もうかな。 昨日と同様に、授業も友達との会話にも全然集中できない。 ランドセルの中にある封筒に意識が引っ張られて、まるで頭と封筒が見えない糸で繋がれているような気持ちになる。 そんな浮ついた私を引き戻してくれたのは、帰りの会での先生の一言だった。 「来週の水曜日、今年度初の宝良小学校との交流会やるよー」 「やったあ!」 学校が終わったという喜びに加わった朗報に、教室は大騒ぎになった。 「凜来るね!超楽しみやん!」 「えー!早く来週ならんかなー!」 去年転校したばかりの時は置いてきぼりだった私も、今ならこの喜びの渦の中に入れる。 島に行って遊ぶのも楽しいけれど、学校で会うのはまた新鮮だ。 「ねえ、美桜、凜来るの楽しみやね!」 葉月は坂道をスキップで下って行く。 下り坂で弾む体は、楽しみな心と連動しているようだ。 「ねー。楽しみだね!」 隣に並ぶ歌音ちゃんも、にこにこ顔で頷いている。 「ねえ、美桜」 スキップをぴたりと止めた葉月が近づいてくる。 何かをたくらむようににやりと笑う葉月が、顔を覗き込んできた。 「美桜って、凜のこと好きやろ」 「えっ⁉」 声を出したのは私じゃない。 いつも控えめな歌音ちゃんの大声につられて目を向けると、大きな目がさらにまん丸に見開かれていた。
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