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「『ぎゃ!』って?『ぎゃ!』って何?傷つくなあ」
冗談交じりで笑いながら、太一はわざとらしく胸を押さえる。
「ごめんごめん!そういう事じゃなくて、湊人だけだと思ってたからびっくりしちゃっただけ」
なんとかごまかせたと思う。
葉月と歌音の押し殺したような笑い声を気にしつつも、私たちはまた帰り道を歩き始めた。
「来週楽しみだねー」
太一は言ったけれど、先程の話題の後で『楽しみ』とは言いにくくなってしまった。
「ねー!凜、元気しとるかな?」
私と太一は連休に島に行って凜と会ったけれど、みんなにとっては久しぶりだった。
「連休に会ったときは元気だったよ?ね、美桜」
「あ、うん。相変わらず元気だった」
葉月の顔は見られない。
きっとニヤニヤしてるんじゃないかなんて勘ぐってしまう。
「美桜」
葉月が話しかけるけれど、私はその顔を絶対見ない。
「美桜ってば」
「もう!何?」
肩をたたかれて、仕方なく葉月の顔を見た。
なんだか恥ずかしくて語気が強くなってしまったけれど、葉月はやっぱり笑っている。
「美桜の帰り道はあっちやろ?」
気が付くと、もう分かれ道に来ていた。
みんなと別の道を行かなければいけないのに、よほどぼんやりしていたに違いない。
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