第4章

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「ぷぷぷ。じゃあね、美桜。ぼんやりしよったらいかんよ」 みんなは笑顔で私を見ている。 あぁ、恥ずかしい。 バイバイって手を振って一人帰りながらも、私は赤い顔で歩き続けた。 『好き』だなんて。 もちろん二人のことは好きだけど、その『好き』のことは考えてもいなかった。 「ただいまー」 「おかえり、美桜」 今日も、おばあちゃんの笑顔は私の癒しだ。 手を洗ってうがいをしてから、夕ご飯の支度をするおばあちゃんのそばで宿題をする。 ランドセルを開けてプリントを取り出そうとして、はっと思いだした。 途中まで引き出したプリントファイルには、太一がプリントしてくれたパパからのメールが入っている。 「今日は学校からのお知らせある?」 ある。 お知らせならある。 来月の中旬に予定されている授業参観のお知らせだ。 でもそのお知らせを見せるためには、一度プリントファイルを取り出さなければならなかった。 もしその時おばあちゃんに『それは何?』って聞かれたら、うまくごまかせる自信は無い。 「今日はね、なかったよ」 漢字ノートとお手本を取り出して、またランドセルを閉めた。 後で取り出して、忘れないように見せないと。 「そう?じゃあ宿題頑張らんね」 おばあちゃんは背を向けて夜ご飯の準備を続けた。
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