第4章

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「よしっ!漢字終わり!」 パタンとノートを閉じて鉛筆と消しゴムを片付ける。 「あら、今日は早かね」 パパのメールを読みたくて、いつもより急いで宿題を終わらせたけれど、実はまだ一つ算数のプリントが残っている。 「うん。書き慣れた漢字ばっかりだったから、すぐ終わっちゃった」 ランドセルに漢字ノートとペンケースを入れた。 雑に書いてしまった漢字ノート、多分明日は花丸がもらえないに違いない。 「おばあちゃん、部屋で灯里ちゃんに手紙を書いてから夜ご飯のお手伝いするね」 言いながら階段を上がったから、背中越しに『はあい』っておばあちゃんの声が聞こえた。 部屋の扉を閉めると、いよいよ自分だけの空間に包まれた。 誰もいない部屋に、ドキン、ドキン、って自分の鼓動だけが響く。 ベッドに腰を下ろしてパパからのメールを取り出した。 わざとゆっくり四つ折りの紙を開くと、プリントされた無機質な文字が見えた。 『美桜へ 月に一回って言うメールの約束を破ってごめん。 でも、どうしても美桜に伝えたくてメールしました。 家庭訪問があったんだね。 中学受験のことが書いてあったので、気になって。 美桜が本当に中学受験を考えているのなら、こっちに戻ってこないか?』
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