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一際大きな『ドキン』が鳴って冷や汗が出てきたけれど、一度鳴った『ドキン』はその後聞こえない。
それどころか何の音も聞こえなくて、ただ呆然と文字を見つめた。
『本気で勉強したいのなら、都会の方が良いと思って。
ママともしっかり話し合って、一度考えてみて欲しい。
なんでも相談にのるから、いつでも連絡してね。』
大変なことになってしまった、となぜか思った。
ちょっとした世間話だったはずが、こんなことになるとは思ってもみなかった。
パパのところに戻るってどういうことかな。
ママと一緒にパパのところに帰るっていうこと?
それとも私だけがパパのところに?
ママとしっかり話し合ってって書いてあるけれど、そんなことしたらこっそりパパと連絡を取っていることがバレてしまう。
冷や汗は止まらなくて、メールを持っている手は小刻みに震えている。
周りは静かだけど、本当に静かなのかそれとも何も聞こえなくなってしまったのか分からない。
トントン、と音がしたのは突然で、慌ててメールを布団の中に押し込んだ。
「美桜」
おばあちゃんの声に返事をしなきゃいけないんだけど、のどが張り付いて声が出ない。
「美桜?」
返事をしない私を不思議に思ったおばあちゃんだけど、無理に扉を開けることはしない。
無理やりつばを飲み込んで、何とか返事をした。
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