第4章

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「な……何?」 いつもより高い声が出ちゃったけど、変に思われなかったかな。 「開けるよ?いい?」 「うん。いいよ」 椅子に座りなおして、適当なペンを手に持った。 「手紙書き終わった?」 振り向いたおばあちゃんの手には、お財布が握られている。 「うん。お遣い?」 一番近い商店まではやっぱり坂道を登らなきゃいけなくて、おばあちゃんの代わりにお遣いに行くことが多かった。 まあ、本当の目的はお遣いついでに買えるおやつなのだけど。 「そう。パン粉がちょっと足りんかも。立派なアジをもらったけんアジフライにしようと思って」 こっちで食べるアジフライは身がふっくらとして大きくて、私の大好物だ。 「パン粉、買ってくるよ」 立ち上がり、自分の財布を手に取った。 昔お祭りの時に記念セールで売られていた花柄の財布を気に入って使っているけれど、そろそろ子供っぽいかもしれない。 「ありがとう。パン粉一袋とあとは何か美桜の好きなおやつ買っておいで」 正直さっきのパパからのメールの衝撃がすごくておやつどころじゃないのだけど、ここはいつも通り笑顔でお金を受け取った。 「じゃあ、行ってきます!」 元気に家を出て、坂道を登り始めた。
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