第4章

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元気だったのは数メートル。 坂道を歩く足がいつにも増して重く感じて、一歩一歩に時間がかかる。 友達と一緒に話しながら進んだり自然豊かな風景を見ながら歩くのが好きだったこの坂道に、今はなんだかイライラしてしまう。 前に住んでたところだったら、近くにスーパーがあったのに。 ううん、スーパーじゃなくてもコンビニならもっと近かった。 ちょっとおなかすいたなって思ったら数件あるコンビニの中からその時の気分で好きなスイーツを買いに行ってたし、ノートだって消しゴムだって前のところならすぐに買いに行けたのに、ここでは車で行かないと買えない時がある。 「もう、本当に田舎はこれだから嫌なんだよ」 こんなこと、引っ越してきて初めて思ったかも。 思わず口にした言葉に、自分が一番びっくりした。 誰かに聞かれなかったかとドキドキして見渡してみたけれど、そもそもあまり人なんか歩いていなかった。 誰もいなかった安心感からか大きくふうっと息を吐くと、少し気分が落ち着いた。 息を吐いたくらいじゃ足の重みは軽くならないけれど、おばあちゃんの顔を思い出して少しだけスピードを上げた。 そのおかげで余計なことを考えずに商店へ着いた。 カララン、とドアベルが鳴って、『いらっしゃいませー』という声だけが聞こえた。
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