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「あらぁ、美桜ちゃん。お遣い?偉かねぇ」
レジにパン粉とおやつを持っていくと、ふくよかな商店のおばちゃんが声を掛けてきた。
「いえ」
声の大きなこのおばちゃんは、その行動力と好奇心と顔の広さで町の広報の地域記者なんかもやっている有名人だ。
「そういえば、美桜ちゃん」
商品を袋に入れながら、おばちゃんは少し声を潜めた。
「お父さんとはどう?たまには連絡取ったりしよると?」
私は、このおばちゃんが苦手だった。
こっちに引っ越した時から、おばちゃんの詮索はすごかった。
まるで私とお母さんのことを心配しているかのような顔で、誰にも言わないから安心してと言わんばかりの顔で、私の心を少しずつ抉り取るように聞いてくるおばちゃんは、実は町内でも有名なミーハーな人だったのだ。
通称『歩く広報』と言われているおばちゃんは、今日も心配顔で私に話しかける。
いつもならなんとなくごまかして軽く笑うだけにしているけれど、今日はなんだかいつにも増して不快だった。
「はい!よく連絡取り合ってますよ!」
『お父さんのいない可哀想な子』そう思われたくなくて、精一杯晴れやかな笑顔で言ってやった。
「あ…………そう?」
拍子抜けしたおばちゃんの顔に、少しスッとした。
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