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「糞だな」おれは罵りながら天井を向いた。「スマホタトゥはロクなもんじゃねえ」  腰のスマホタトゥーが明滅した。 <今のあなたにはアルファ波によるやすらぎが必要です・・・>  おれはスマホタトゥの消音ボタンを押した。消音ボタンは葬儀と重篤な疾病時以外は押してはいけないルールになっている。 <消音ボタンを押した理由を述べてください。ルール違反は罰金もしくは教育禁固刑の対象になりま・・・>  おれは消音ボタンを長押しした。  全身が痺れるような震動信号があって、スマホタトゥは静かになった。  シャワー室の音が聞こえた。  三十秒ほどたつと、ふたたび、スマホタトゥが鳴動した。  おれは身を固くした。  市警本部のからの緊急着信だ。 「はい」  おれは思いっきり不機嫌な声をだした。 <エメラルドパークで轢死体が発見されました。至急現場へ急行してください。被害者は女性、SMEの住人と推察されます>  SME《サイレントマイノリティエリア》。  地形のかたちから蟻地獄タウンとも呼ばれている。 「了解。すぐ向かう」  おれは服を着ると、傍らのテーブルにメモを残した。  花梨へ。SMEで事件が起きた。ゴメン。
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