とこしえの中でこそ

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 その瞬間。心臓が、ドクンとはねた。 「もう少し、詳しく聞かせてもらってもいいですか?」  そう言うと、彼女は意外そうな表情を浮かべたが、すぐに頷いて続ける。 「でも、なんて言えばいいのかな。前のまた前の私がどんな人だったのかは分からないんだけどね。でも、前世のことを考えてた時間はすごくあったんだ。小さい頃なんかは、それで周りとのギャップっていうのかな。それに苦労してたし」  彼女の口から出る話は、驚くほど自分と一致している。 「前の私は結構辛いことが多かったけど、なんかずっと心の支えみたいなのがあってね。それが多分その前の私のおかげだったんだよ。今それを忘れちゃってるのは、ちょっと寂しいけどね」  前世の自分が今の自分を支える。そんな経験、自分にはあったのだろうか。少なくとも、ここ二度の生涯においては、そういうことはなかった。  この彼女が語っていることが真実で、本当に自分と同じか、それに似た境遇であったとしても、やはり人によってその価値観は変わってくるのか。 「みたいな感じだね。参考になりそうかな……?」  そう問いかけながら、彼女はカップを受け皿に戻す。  自分と限りなく類似した経験談、また何よりも、向けられる嘘偽りのない純粋な瞳に、その話を信じる決意をした。
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