とこしえの中でこそ

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 しばらく沈黙を生んでしまっただろうか。俺は自分のことを言うべきか言わないでおくか、少し葛藤の時間を要した。  その間も彼女はほのかな笑みを絶やさず、静寂を見守ってくれていた。不安は大いにあるが、こんな機会は二度とないかもしれない。 「実は……」  今度はこちらが信じてもらえるかどうか、といった立場に立たされるが、もうこの際信じてもらえなかったとしても、この機会に賭ける価値は大いにあるはずだ。  鼓動が少し速くなるのを感じながら、俺は息を深く吸って、静寂を破る。 「俺も、同じような人間なんです。俺は今まで、自分と同じような境遇の人に会ったことがなくて、一度でもいいからそういう人と話をしてみたいなって、思ったんです。小説の題材とかは、全部誘い文句でした。口ではどうとでも言えるから、今度はこっちが信じてもらえるか、分からないですけど……」  そう言って、ごめんなさい、と頭を下げる。  想像以上に緊張している。鼓動がここまでうるさく感じたのは初めてだ。  突拍子もないこの発言を、信じてもらえるのかという恐怖と、信じてほしいという願望が交錯しあって、それがなんとも言い表しようのない不協和音になって全身にこだまし、吐息を静かに震わせている。  再び流れる沈黙。先ほどとはうってかわって、この沈黙が息苦しい。  嘘をつくな、と言われればそれまで。これ以上、自分には信じさせる自信がない。体が強ばっているのを感じながら、強く目を瞑った。  いったい彼女は今、どんな表情をしているのだろうか。
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