とこしえの中でこそ

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 この大学の学生食堂は人気が高く、昼時はいつも大勢の人で埋め尽くされる。端にある空席がいつもの自分の定位置だ。  学校内に知り合いはいるにはいるが、特別仲の良いような存在はいない。昔から、こうやって一人でいる時間の方が圧倒的に長かった。  小学生の頃から、自分は周りの友人と深い関係を作ることはなかった。別に人と話すことが苦手というわけではない。  ただ、当時から周囲と自分の間に生じる、価値観の違いを埋めることを面倒に感じていた。それゆえ周囲からも「無関心だ」、「冷たい」などといろいろ言われたものだ。  昼食を済ませ、学内にある大きな図書館へと向かう。特別これといった趣味を持たない自分にとって、本はよく時間を潰すのに重宝する存在だ。もしかすると、最も時間を共に過ごしているのはと訊かれれば、本と答えるかもしれない。  実用書やノンフィクションなどの現実に即したものも読むことはあるが、どちらかと言えば小説や漫画などのフィクションの作品を好んでいる。  こういった物語は、自分にはない世界を与えてくれる。本とは対話をする必要もない。ただ、著者が作り出した世界をこちらが享受するだけでいい。それを通して、面白いという感情をもらえたら儲けものだ。  人並み以上に読書をする自分にとっては、料金を発生させずに本が読める、この図書館という施設の存在は非常にありがたい。  もはや図書館に住みこみたい。もし働くとするならば、図書館勤務が最も性に合っているのだろうか。
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