とこしえの中でこそ

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 いつものように本の背表紙を眺めながら、興味が惹かれるものを探す。「本館スタッフのオススメ図書」と掲げられた棚には、豊富な種類の本が取り揃えられていた。  近代作家の生誕百五十年を記念した歴史的著作。現在若者に絶大な支持を誇る新人作家の恋愛小説。近年ノーベル化学賞を受賞した研究者が、化学に興味を持つきっかけとなった海外文学の作品。  こうやって、ずらっと並ぶタイトルの一つずつに視線をなぞらせていく、この時間もまた好きだった。これだけで、かなり時間が潰れることもある。  しかし、今日は意外にも早く、あるタイトルに行き着いてふと視線が止まった。 『輪廻転生説 ~生まれ変わりはあるのか~』  いつもは気にも留めないようなものだが、今日の講義と重なったからだろうか。気が付けばその本に手を伸ばしていた。  海外ではよくこういった「生まれ変わり」に関する事柄が本格的に研究されているらしく、この著者は以前、海外の研究者が書いた前世に関する書籍を、翻訳した人物のようだ。 「前世の存在を知ることが、人生の見え方をが変える」。帯のキャッチコピーに書かれたその一文が、特に目を引く印象だ。手首を返して、裏表紙に書かれたあらすじの一行にも目を遣る。 『あなたは、生まれ変わりを信じますか?』  これもまた、多くの人が惹かれそうな内容だ。こうしてオススメの棚で、ポップまでついて推薦されているのがその証拠か。  推薦文にも、「神秘的だ」「ワクワクする」といった、好奇心が前面に出たような文字がカラフルな彩りで書かれている。  いったい、生まれ変わりを本当に信じている人は、どれほどいるのだろうか。純粋に疑問を感じる。  そこで、自分はどうなのかと訊かれれば、そんなことは信じるも信じないもない。  何せ、自分がその「生まれ変わり」をしている人間なのだから。
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