727人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
1
街の至るところでクリスマスソングが流れ、人々が浮き足立つこの季節。
俺、高遠颯斗も例外では無かった。
ただし理由は“クリスマス”だからではない。
先日、とうとう超人気俳優であり俺の大切な人、龍ヶ崎翔琉と一線を越えてしまったからだ。
カフェでコップの水をかけられ風邪でダウンしてしまった翔琉を看病し、その流れで初めてを奪われてから早二週間。
連絡を取り合ってはいるが、実はあれ以来一度も顔は合わせていない。
当然、寂しさは募るばかり。
だが正直、様々なメディアに登場する罪なき“俳優”としての翔琉を街やテレビで一方的に見掛ける度、俺はあの夜の情事を思い出してしまい途端に顔が赤面してしまう。お陰で俺は意志を持たぬ看板の翔琉の顔ですら直視できずにいるのだ。
心の何処かではホンモノの翔琉に逢えないこの状況を、少しだけ安堵している自分もいた。
本当にダメなんだ、俺。
翔琉の顔を見るだけであの夜の情事を……。
初心者には刺激が強過ぎる、激しかったあの夜を鮮明に思い出してしまう。
俺の全身を、翔琉の熱が執拗なまでに愛でたリアルな感覚が蘇る。
身体を重ねたら、一切の不安や心配なんてなくなると思っていたのに。
また新たな悩みが出てきてしまって辛い。
それって俺だけなのだろうか。
翔琉は?
翔琉は今、どう思っているんだ?
考えるだけで酷く胸騒ぎがする。
そんな時だった。
最初のコメントを投稿しよう!