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「そう言えば高遠君、クリスマスイブもバイトだけど大丈夫なの?」
いつも通り夜の10時にバイトを上がった俺は、帰り際に副店長から声を掛けられていた。
「……え、どういう意味ですか?」
“大丈夫”の意味が分からない俺は、一瞬思考が止まる。
「どういう意味、じゃなくてさ。まだ高遠君若いんだから、気になる子とクリスマスデートとか無いのかなぁって。高遠君、カッコイイから大学でモテるでしょ?」
心配そうな表情でこちらを見つめる副店長を横目に、そう言えば翔琉と“付き合う”ようになってからイベント事を共にした記憶が無いことに気が付く。
「……」
クリスマスは目の前だ。
だが翔琉からその件に関しては何も触れてこないということは、間違いなく仕事だろう。
人気商売をしている男が恋人であるから、普通の付き合いができないのは百も承知。
むしろ翔琉本人からも過去にそう申告されている。
好きな相手とイベント事を“一緒に過ごす”。この当たり前の流れが自身にピンとこなかったのだ。
「高遠君?」
黙り込む俺を怪訝そうに副店長は見つめる。
「あれ、もしかして聞いたらいけないことを聞いちゃったかな?」
罰が悪そうな表情を浮かべた副店長を、今度は俺がじっと見つめた。
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