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左の肩に3cm程の痣を見つけたのは2年前の夏だ。
始めは知らないうちに何処かにぶつけたのかと思ってた。
痛くも痒くもないからほっておいた。
すると、みるみるうちに痣は大きくなりやがて人の顔型のようなものに変わっていった。
そして、ある日、目を見開き喋った。
「そろそろ、お前を喰ってもいいか?」
「あなた、悪魔だったの?」
特に驚きもせず、淡々と聞いた。
「そうさ悪魔さ。お前が食べ頃を迎えるのをずっと待っていた。」
「そう…、いいわ。
もう疲れてしまった。もがけばもがくほど、泥沼の底に沈んでいく。この世界から連れ出してくれるなら、悪魔でも構わない。」
「お前は、しぶとく頑張ったさ。おかげでよく熟れた。旨そうだ。
…子供達の事はいいのか?」
「悪魔なのに、お節介なのね。子供達は、充分育ったわ。もう、私なしでもやっていける。」
「心残りがあると、渋みが出るのでね。そうか、ではいいのだな。」
悪魔は、私の肩からメキメキ骨を軋ませて飛び出すと、一思いに私を喰った。
喚いて、命乞いをしてしまいそうなほど、痛い。
身体中が熱く燃えるように、痛くて苦しい。
これが、私が生きている最後の感覚だ。
悪魔に喰われ、私は孤独から救われる。
最後の最後に、生きている実感が得られた。
悪魔は最後に右足の親指を、バキバキと音をたてて喰った。
そして、黒いベルベットのようなうつくしい翼を拡げ飛び立った。
次は、あなたのもとへ飛んでいくかもしれない。
悪魔が訪れないってことは、まだ青ぇーな。
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