ある女性のちょっとした苦悩

ある日、家に電話がかかってきた

大体、今時、家電だと勧誘とかが多い

出てみると
女性の声だった

あの、中村さんのお宅ですか？

はい

ちえみさんは…

はい、私ですけど

わたし、わかる？

え？(わたし、わたし詐欺か?)

江藤、江藤明美

あ、あーー
久しぶりだね

久しぶりー元気？

この時、私の頭の中は？で一杯になっていた

なにせ、ざっと20年は会っていなかったし

しかも

今ね、わたし、中村さんの家の、近くに引っ越してきてるの

え？

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なんでうちの家がわかったの？
それでもって、電話番号まで？
もっと言えば結婚した後の名前までどうして知ってるのよ？！
オーイ、なんで知ってんだ
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口から今にも出てしまいそうなその疑問の数々

私は本当は絶叫するくらい言いたかった

その言えなかった言葉を置き去りのまま

えっ、そうなんだ

最近、中村さんち新築したでしょ？

えっ？
しないよ
‥‥
あ、新築した親戚の家がバス通りにあるからそこと間違えてるんだな
と、思った

そこは親戚の家なんだ
うちはもう一本入ったとこなんだけど

言わなきゃ良かったものを口を滑らした(私のバカ！)

そうなのぉ〜
その家だとばかり思ってたよ

うん、違うよ

そのあと、無難な話をいくつかして

じゃまたね

その日はそんななんてことない話で終わった

話終えてなんだかすごく疲れた私

中学当時、彼女とは仲良くしていたわけじゃないしちょっと不思議ちゃんだったこともあって話す子は少なかったから私みたいに拒絶しないタイプに寄って来ていた傾向はあったのは事実だった

電話からひと月くらいして

また
江藤明美から電話がきた

はい(私)

あ、中村さん
わたし、江藤明美

あっ、はい、この前はどうも

中村さんちわかったよ
よく通ってたところだったのに気がつかなかった
わたし、今、難病になっちゃってリハビリに行ってるのね
そのバスが毎回通っている道だったの

は？
難病？
そうなんだ、大変‥だ、ね

そう言ったあと、今度はうちを見つけたって言う言葉が私の脳みそに到達して、認識されて
は？となった

なんで見つけたの？
探したのか？
何のためにわたしんちの家を見つけなきゃいけないのよ！？(ココロの声)

あ〜面倒なことになんなきゃいいなと思った、まさにその時！

中村さんちに遊びに行ってもいい？

と、のたまった

私はめちゃくちゃ忙しい毎日で仲のいい子ともなかなか出かけられないのだ

で、あるからして、ずーっと会ってなかった同級生とましてや、全然仲良しではなかった彼女とお茶するのは申し訳ないけど気がすすまなかった

難病が気には、なるからつっけんどんに断っては悪いとは思った

が、しかし本当に忙しいのだ

なので丁重にお断りしたんだが

すると、カフェでもいいよ

と、再びのたまった

カフェの方が気楽ではあるけれど、問題は時間がとれないんだ

うそでは無い！

するとこの後、江藤明美が言い放った一言がボディブローのように私の中に居座って痛めつけてくることになったのだ

「中村さん、何がたのしみで生きてるの？」

まさに直球で来た感じだ

私の事を何も知らない江藤明美が投げて来た大谷翔平級の直球だった

それからと言うもの

たびたび私の中でその言葉はリフレインしてくるようになった

これだけ私が気にするのには理由があった

私は一人でお茶しながら、ふと考えることがある

今年、男子の友達から夏の甲子園に観戦に行った写真入りの暑中見舞いをもらった時のこと

その男子は私と同級生で娘さんの高校が甲子園に出場したことで「死ぬまでにやりたい事の一つ」が甲子園を観戦することだったと書いてあった

"死ぬまでにやりたいことリスト"

何回か耳にしたことがある

私は何かな？

はたと考える

う〜ん

和菓子を習いたい

絵もちゃんと習いたい

とにかく人が笑顔になることをしたいと言うところにいつも行き着く感じだ

会社の上司だった女性からも時々お手紙を頂戴するが何か好きなことやっていますか？と毎回質問されている始末

今、死んじゃったらあなた、どーするのよ？

ですよね⤴️

まー、そんなことがベースにあったところへ江藤明美の直球が飛んできたと言うわけなのだ

あなたに何がわかるのよ！と、言うのは簡単だが自分をわかっているのは自分だろ

確かに一理あるんだ
残念だけど一理も二理もある

江藤明美には申し訳ないが今のところお茶の予定はない

でも、少しずつ何か好きなことを実践していくようにしようと思うようになった

ある意味、きっかけを作ってくれてありがとう

江藤明美さん
(感謝を込めて最後くらいはさん付けにしてみたよ)