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「いっただっきまーす!!」
両手を合わせて、ウキウキ声で合唱する。
「…いただきます」
俺の声に合わせる様に、やや小さな声で合唱する紫苑。
ウマッッ!!
一口噛り付いた瞬間口の中が幸せになる。
「…」
「ぷっ!」
突然紫苑が吹き出した。
「?」
何事かと手が止まる。
「くっ!あっはっは!ごめん、何でもない。邪魔して悪かった」
続けてくれ。そう言うが、笑いが止まらない様で、ずっと肩が震えている。
「???」
訳が分からない。
だが第一印象とは、かけ離れた屈託のない笑顔に思わず見入ってしまう。
すると、俺の視線に気付いた紫苑の方が笑いを止め、俺を不思議そうに見る。
「そうやってもっと笑えばいいのに。すげぇ良い顔するじゃん」
思った事をそのまま口にする。
すると紫苑は、またもや予想外に顔を赤面させた。
コイツ、面白れぇ!表情無いと思ったら、すっげぇ分かりやすいじゃん!
「いや、本当に食う時と寝る時は静かなんだなと感心しただけだ。まるで猿だな」
意外と仲良くなれるかもと思った矢先、憎まれ口を叩かれる。
「誰が猿だと?!」
途端に喧嘩腰になる。
結局、食堂を出るまで騒々しいやり取りは続いた…。
可愛く無い奴と思いつつ、俺はあの紫苑の笑顔が忘れられないでいた。
どうやったらまた笑ってくれるかなと考えたりしたが、難の事はない、紫苑は笑い上戸だった事が判明したのはこの数日後だった。
ただ、紫苑が笑うのは身近に居るのが俺だけと言うのもあり、俺の前だけだったのだが、周りと比べる事のない俺には、そんな事気付ける訳も無かった…。
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