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プロローグ
窓から見える景色が夏から秋に変わる頃、僕は予定していた映画の時間を気にしながら洗濯物を畳んでいた。
親友の渉と慎吾は合流する前に本屋に行くと言っていたが、日曜日は母親の代わりに家事をするのが篠原家の決まりになっていて、それを知っている2人は僕の参考書もついでに買ってくると連絡をくれた。
最後の洗濯物を畳み終え、リビングに掛けた時計に目をやれば予定よりも早い。テーブルに置いたスマホに手を伸ばして、終わった事を2人に連絡すると母さんの洗濯物を抱えて立ち上がった。
やっと家事から解放される喜びと今から観るアクション映画の事ばかり考え、せっかく畳んだタオルを蹴飛ばしてしまい小さな舌打ちをする。
母親の部屋に洗濯物を置いたらまたタオルを畳んで、今日使うバスタオルは風呂場に持って行こうと、そんな事を考えながらドアノブを掴んでそのまま引いた。
目の前に広がる部屋に違和感を覚えた。
でもその違和感はなんなのかすぐにわからず、綺麗に整えられたベッドの上に服を置いた。いつもならこのまま部屋を出て遊びに行くのに、今日は何故かそれが出来ず違和感を探そうと辺りを見回す。
僕の母は雑とまではいかないけれど、細かな物を捨てられない人だった。
僕が幼い頃にガチャガチャで集めたキャラクターのマグネット。キーホルダーや缶バッジ。切れ味の悪いカッターもペン立てに刺さったまま。
でも今日はそれらが部屋に無く、まるで大掃除を終えた後のようで珍しく思えた。
大掃除の時は必ず僕を頼っていたはずなのに、母親なのに大人になったな、なんて少しおかしく思えて自然とクローゼットを開けた。
たぶん、クローゼットの中に全部押し込めているだけだろう。
そう思ったから、クローゼットを開けたのだと思う。
でも、たくさん服やら小物があるはずのクローゼットの中は、洋服一枚掛かっていなかった。
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